おんがくのじかんで催される、バーでの演劇ショーケース『劇的』
バーでのショーケース公演「劇的」vol.02 『劇的な葬儀』
2023年3月23日(木)ー26日(日)@東京都 三鷹 おんがくのじかん
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【ゲストプロフィール】
旦妃奈乃
https://twitter.com/danhinano
(四日目四回目 https://twitter.com/yokkameyonkaime)
いつかの前日
ユイ:去年「うにこん」(東京学生演劇祭2022参加作品)を観させていただいて、めちゃくちゃおもしろくて。
絶対本公演も観ようと思っていた団体さんだったので、今回お話しできて、そして「劇的な葬儀」も出られるということで、すごく楽しみにしております。
よろしくお願いします。
旦:よろしくお願いします。
ユイ:まず最初に、簡単に自己紹介をお願いします。
旦:四日目四回目で主宰をしている旦妃奈乃です。
四日目四回目では作と演出、たまに出演、企画と運営全てを担っております。
四日目四回目は現時点で特定のメンバーを持たない団体で、私が誰かと何かする時に使っている名義が四日目四回目なんです。
私は、多摩美術大学の演劇舞踊デザイン学科で演劇を4年間学んでいて、このたびめでたく卒業ができるんじゃないかというところです。
大学では演劇というよりも、舞台芸術やパフォーミングアーツ、空間づくりに重きを置いて学んできました。
言葉と身体、それを空間で立ち上げることに興味を持って、そういう作品を作っていきたいという気持ちで、四日目四回目名義で物作りをできたらいいなと思っています。
ユイ:四日目四回目の名前の由来を聞いてもいいですか?
旦:はい。
「いつかの前日 四日目四回目」というのを最近使い始めたんですけど、これも元々あったコンセプトでした。
日付の「5日」といつか来る日の「いつか」の前日—―まだ来ていない前日、そういう時間空間設定にしたくて、名前に込められています。
現実と空想のどちらとも断言しない世界観を作りたいと思っています。
また、小学一年生でも誰でも読めるし、四日目と四回目というのがいつを指すのかわからない。「今」を具体的に示せない感じ。
ユイ:ステキな名前ですね。
「いつかの前日」って、めっちゃいいですね。
文字だけ見ると記号っぽい形をしている文字だから、見た目でもおもしろい。
いつかの前日
ユイ:次の質問なんですけど、演劇でも演劇以外でもいいんですけど、好きなものをお聞きしてもいいですか?
旦:漫画を読むことです。
ユイ:どんな漫画を読むんですか?
旦:少年漫画とか好きです。
ユイ:演劇を作る時にも、漫画を参考にするみたいなことがあるんですか?
旦:と思うじゃないですか?
演劇は時間が短いメディアだと思っていて、3時間で描き切れる起承転結を、私はあまり書きたくない。
漫画とかは起承転結を楽しんでいるし、劇的な展開が大好きなんですけど、それと演劇というメディアは違うなと思う。
漫画を好きだからこそ、演劇という媒体で表現したいものを考える時に使ったりすることはあるかもしれませんが、似てくるってことはない。逆の参考にはしていると思う。
ユイ:確かに得意分野が違う感じしますもんね。
旦:そうですね。
漫画やイラストを描いたりは、自分でもちょこっとしたりします。
ただ、自分が読むのが好きな作品を描くことが自分でできないというのは、演劇をやる前の創作で先にあったかもしれない。
高橋留美子先生とか荒川弘先生がすごく好きで、共通して描かれているのは熱くて強い男の子が戦って勝つみたいなお話なんですけど、熱くて真っすぐで強い人を描きたくてチャレンジもしたんですけど、描けなくて。
私のパーソナリティではそういう人を空想できないという自覚がそこであった。演劇だと空想がどうとか人物設定の前に、役者という強い個性を持った生身の、そもそも強いエネルギー体がある。
そういう意味で、生身の人間が関わっているものに興味を持ったというのが流れとしてある。
稽古場だと「やりたくないことはやらないで」ということは結構言う。
「自分がやれないと思うこともやらないで」ということも言うのですが、生身の役者であるという大きな意味がまずあると思うので、その役に寄り添うことで自分を殺すとか、そういうことは本末転倒だと思っています。
台詞でも、自分と照らし合わせて言いづらかったり、共感できなかったりあると思うんですけど、そういう際にはまずそのままやらないでほしい。
その戯曲を役者がどう納得して、取り込むかの解釈の余地もあるものだと思うので、やらされているみたいなことは、絶対にしてほしくないなと思う。
自分の意見を言ってくれるのは嬉しいというかやってほしいと思います。
役者に対して、もっとこうだったらなと思うことはなくて、その人がやりたくないこととか、その人にかかっているなにかしらの緊張やテンションがかかっているところは、私は寧ろ愛おしいと思う。
何が無ければなとか、何があったらいいのになとか思うことはない。何かに引っ張られたり、囚われたり、絡まっている状況こそ魅力的だと思えるので、役者の自意識が好きなんです。
例えば本当にやりたくなくて役をやっているとかってないと思うんですよ。
一方で、その役がめっちゃ嫌いとか、やりがいがなくて嫌だとか、明確な理由があって、それが透けて見えるみたいなのが愛おしいんですよ。
その状態の役者をどうやって成立させるかとか、嫌いな役を演じるためにどうしたらいいのかを考えようと、役者本人のポジティブもネガティブも受け入れて発表したいという感じで、創作をしているかもしれない。
私からここを目指そうよと示すことはあんまり無くて、私から目標地点を示しはしますけど、役者の納得は自分で作り上げるものだと思う。そういう意味で、役者がやれると思ったら、成立すると思う。
もちろん本番日だったりのタイムアップもあると思うんですけど。
本番初日に照準を合わせていないんですよね。
千穐楽で完成したら良いとも思っていないんで、完成しないこともあるんじゃないか。集まったメンバーと良い作品――納得できる、みんなが成立していると思う作品なのか、より良い作品を作りたい。
その時にどちらかというと稽古過程に重きがあるし、結果も、公演が良ければ良いというよりは、抽象的な創作として、公演が無ければ永続的に追及していくというのがあるかもしれない。
演出としては、お客さんに見せるというのは、私にとって創作のもう一つ外側にある軸なので、お客さんにとって成立しているかどうかは、別で考えています。
創作メンバーとしては、公演で完成しきらなくてもいいと思っている。
一つの公演でも毎回変える部分とかもあるし、役者が「次はこうやってみるわ」というのにも乗ったりもする。
正しさとかよく分からないですけど、より良いものっていうのは、制限時間を決めてやるものでもないので、興行主としての私と、創作を追及している私が共存している。
お客さんに作品を観てもらってお金をもらう興業のサイクルが無ければ、良い作品づくりに期日はないと思うんですよね。
ユイ:面白い話が聞けて嬉いです。
興業と、演劇をただただ好きでやりたいっていうのは、私も最近考えていたので、聞けて良かったです。
人間が自分の中にもう一人宿す
ユイ:演劇を始めた経緯についてお伺いしても良いですか?
旦:私は高校では演劇に携わっていなくて、多摩美術大学に入る前に武蔵野美術大学に一瞬いて、そこで友人に誘われて劇団サークルに参加していました。
仲良くなった子が演劇サークルに興味があると言っていて、私も面白そうだとついていって、学園祭のオーディションがあるというので受けてみたら受かって、役者をやることになった。
そこから半年近く、役者として演劇に向き合うことになったというのがきっかけでした。
多摩美に入ってからは、空間の表現が好きだな、やってみたいなと思った。
以前、役者をやった際に、すごくやりづらい役だったんですけど、途中からその役に似た状況が自分に作られていって、それで役への向き合い方が変わっていくのが面白くて。
ユイ:へぇ。
旦:役者って傍から見ていると、ある種職業的にいるのかと思ったけど、人間としての個人と、全然別の人格で過ごしてきた時間があるっていうこととの、掛け合わせが興味深いことのように思えた。
人間が自分の中にもう一人宿すということはとてつもないことだから、それで興味を持ちました。
そうした色んな演劇にまつわることの興味から、入っていきました。
ユイ:さっきからお話を聞いていて、旦さんはとても人間が好きなんだな、興味があるんだなと思って、面白かったです。
リアルタイム性が強い公演
ユイ:演劇の原体験というか、一番最初に演劇に出会った体験でいうとどうですか?
旦:あんまり公演とかを観に行く家でもなかったので、学校で演劇鑑賞会とか観たかなあ、というぐらいなんですが、ただアイドルのライブが好きだったので、それを観に行ったりしていて、それが私の中では演劇に近い体験な気がします。
それくらいで、あとは記憶がないです。
ユイ:学校で観た演劇にはあんまり興味を持てなかったんですね。
旦:そうですね。
ステージパフォーマンスの方に元々の興味があって、それはよく見させられていたんです。グラミー賞とか、音楽系のパフォーマンスはよく見させられていて、そっちの方が原体験としてはあると思います。
ユイ:演出したり創作をするにあたって大切にしていたり、一番重要視していることとなるとどうですか?
旦:役者とすごく話をするようにはしていて、役者に地続きで演技をしてほしいんです。
まず、役者と仲良くなりたい。それはハッピーとかそういうことじゃなくていいんですけど、役者がある種自由に挑戦できる場に稽古場を開くこと。
その場が安心できれば色々挑戦できると思うので、「何を挑戦してもよいんだな」と思ってもらえるように、座って話すことを大事にしています。
ユイ:個別にですか?
旦:個別にもあるし、稽古中に「ここムズくね?」みたいにラフに話したり。
分からないことについて話すみたいなことを、考えています。
ユイ:演出家がこれをやりたいからこれに進むぞ、っていうより、みんなで話し合って、やりたいことを決めたいという方針を決めていくみたいな感じなんですね。
旦:そうですね。
作品の根幹とか方向、台詞をどういうテンポ感や熱量、テンションでいくかとかの設定は私が決めますが、あとは役者の魅力を引き出していきたいなという感じです。
ユイ:四日目四回目の、今後の展望とか、5年後10年後にどうしていきたいかとかってありますか?
旦:四日目四回目というプロジェクト名での活動は続けていきたくて、直近でやりたいのは、場を開くこと。
人が集う場に興味があるっていうのも演劇に限らず、そういう場を作りたいなと思います。
興行を続けることについても考えていて、収支をプラスにしていくための創作というのは私は辛いので、短編だったり、期間が短い、規模感が小さい、ラフに打てる、リアルタイム性が強い公演を打ちたい。
企画を立ててから1年だったり1年半かける公演のシステムが、私のやりたいと創作とあんまり合わないなと感じているので、自分のアトリエが欲しいなと考えたり、そういう創作、お客さんや人との関わり方ができればいいなと、四日目四回目として考えます。
ユイ:実験じゃないけど、ぽんぽんと。
3か月とか半年とかかかっちゃうと腰が重くなっちゃうと思うので、そういうのをクリアしたいのかなと思いました。
創作をするからこの世に生きさせてください
ユイ:次の質問なんですけど、創作するにあたってエンジンになっているというか、エンジンになっていることってありますか? これがあるからまだ作品を作れるみたいなものがあれば聞きたいです。
旦:無いです。
私は創作が生き甲斐みたいな感じなので、エンジンというよりも、やらなきゃ生きている価値が無いなみたいな。
新しいものを生み出せない自分に価値が無いなみたいなところがあるので、なにかを糧にして頑張るというより、創作をするからこの世に生きさせてくださいみたいな気持ちが強いです。
ユイ:逆に生きるためのエンジンが創作みたいな。
旦:そんなハッピーな感じではやっていないんですけど。
作りたくはなりますよね。それ自体が唯一無二の楽しみ。
ユイ:最近刺激を受けたとか、単純に面白かった作品とかパフォーマンスがあればお聞きできればと思います。
旦:全然思いつかないですね。色々観たりはしたんですけど。
ユイ:漫画とかでも。
旦:うーん。
ユイ:あんまり?
旦:NewJeans(5人組ガールズグループ)は好きですね。
ユイ:NewJeansはどういうパフォーマンスをというか、特徴とかありますか?
旦:90年代のアメリカのアイドルっぽいコンセプトで、衣装とかも良い。
私は衣装とかヘアメイクが好きで、アートディレクション的なところに刺激を受けています。
ミン・ヒジンさんっていうK-POPの有名なアートディレクターが立ち上げたグループなので、CDやグッズのアートディレクションが良いです。
ユイ:私も調べてみます。
パッと調べただけで、すごくお洒落。
完成形が見えないところ
ユイ:今回「劇的な葬儀」で上演する作品について、ざっくり教えてください。
旦:全然決めてないです。
今回はいつも一緒にクリエイションしているメンバーを集めているので、チャレンジングな試みができると勝手に思っています。
戯曲から立ち上げない立ち上げ方をしようかなと。
なので、一週間くらい籠って立ち上げていこうかなみたいな。
「こういうシーンを作りたい」という絵面が幾つかあるので、プロットを纏めていくというより、折角よく知れた仲間と作るので、完成形が見えないところから立ち上げていきます。
自由な取り組みで作品を作っていけたらなと思っています。
どういう作品になるんでしょうね。楽しみ。
ユイ:さっきお話に出た、リアルタイム性が強い作品になる予感がします。
旦:そうですね。そういう作品を作りたいので。
今だから作れるみたいな、一週間くらいでざーっと作る作品にできる機会ってなかなかないので、そういう。
ユイ:おうち時間というか、一人で楽しめるものを教えていただければと思います。
旦:Netflixに、宮藤官九郎さんの、長瀬智也さん主演のTBSのドラマが入ったんですね。
私はもともと、宮藤官九郎さんが大好きなので、『池袋ウエストゲートパーク』と『タイガー&ドラゴンズ』、『俺の家の話』。
宮藤官九郎さんがすごく好きなので、ドラマが入ってくれて嬉しいです。
ユイ:『池袋ウエストゲートパーク』は観てみたいと思っていたので、観てみます。
生身の人間が全力であるという姿を見てもらえたら
ユイ:最後に何か、言っておかないとなということがあればいただきたいです。
旦:今回若手を集めている企画だと思うので、色んな同期の人達と関われる機会が嬉しい。
作品として良いものを観たとか、メッセージをもらったというポジティブさも良いと思いますが、生身の人間が全力であるという姿を見てもらえたら。
よろしくお願いします。
◎作品情報◎四日目四回目「あいう」
~構成・演出~旦妃奈乃(四日目四回目)
~出演者~井澤佳奈越石裕貴旦妃奈乃
~参加チーム・タイムテーブル~βチーム2023年3月 24日(金)19:00 25日(土)15:00 26日(日)19:00※※終演後にアフタートーク有(約20分予定)
受付・開場は開演の20分前。上演時間は約90分予定(1団体につき約20分の上演+OP演奏15分)。
※次回は明日、ザジ・ズー アガリクスティ・パイソンさんのインタビュー記事です。ウキウキ。また次回でお会いしましょう!
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