おんがくのじかんで催される、バーでの演劇ショーケース『劇的』
バーでのショーケース公演「劇的」vol.02 『劇的な葬儀』
2023年3月23日(木)ー26日(日)
@東京都 三鷹 おんがくのじかん
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同じ日本大学芸術学部演劇学科の同級生である3人。
キルハトッテ/演劇ユニットにもじ主宰の山本真生と山本作品の常連である林美月。
紙魚の主宰である濱吉清太朗が書き下ろし作品を演出するのは初。山本作品を演出したいという二年越しの夢が叶った今回。
そんな組み合わせでの今回の公演。
稽古初日後に大学の向かいのカレー屋で鼎談をしました。
盛大にネタバレしてます。
そして過去作の題名を何の説明も注釈もなく出してます。気になる方は是非サイトの過去作紹介をご覧ください。
濱吉:今まで何作品作演出したの?
山本:オンラインもありですか?
濱吉:そう。
山本:ちょっと待って、、、1、2、3、4、5…。うにうまい合わせて8作品。
濱吉:その中でオンラインは何作品?
林 :2?。
濱吉:結構多作だね。
山本:全部短い。
濱吉:でもそれって2020年以降にデビューした演劇人の特徴になり得るのかなって思ったりした。
山本:あー。
濱吉:私たちの特徴、短さなのかなって。
山本:長編は60分が1本と45分が1本。それが一番長い。
濱吉:お金とかコロナとかそういう現実面考えたら30分の作品が多くなるのかも?
山本:ショーケースとかが多いのかも(増えたのかも)。
濱吉:あー
山本:あとにもじがショーケースっぽい団体っていうのが大きいかも。にもじで発表したのは全部短編だから。
濱吉:あー、そうか。それもコロナでのリスクヘッジだもんね。
山本:そうそう。
林 :あとはお金も問題だなって見ながら思ってる。
濱吉:長い作品やりたいよね。あ、話めっちゃ逸れるんだけどさ、いや繋がるかもしれないけど。年末に東京ラブストーリーみてたの。織田裕二のやつ。
見てて鬱陶しいくらい男女がくっついたり離れたりしていて。それ見てたら疲れちゃって。でもそれって時代の体力なのかもしれないって思って。太く長い感じ。くっついたり離れたりずっとしているのに観客が耐えれる体力を持っているバブルの空気。
でも最近ってリーマントリロジーとかパチンコとか年代記ものが流行ってると思ってて。おじいちゃんの子供時代から孫まで、とか一族の100年の歴史、とか。それって細く長い作品を求める時代になってるのかなって思ったりして。
だから太いものには観客はもう耐えられないところに来ているんじゃないかって。
林 :この前朝ドラもやってなかった?
山本:カムカム?
濱吉:それも年代記ものなんだ
林 :3世代
山本:おばあちゃんの代から
林 :5世代ものとか出てきたら面白いかもしれない笑。長すぎるのかな
濱吉:それでいうと、体力ある国。例えば韓国とかはまだ太くて長い物語が出てると思ってて。トッケビなんて何百年?の壮大な物語でしょ。だから韓国ドラマは面白いけど1話見るごとに疲れちゃう。
林 :しかも長いしね
濱吉:1時間半とかあるしね
山本;話数も多いしね
林 :映画を20回みるのと変わらない。
濱吉:そうだね確かに。
林 :っていう悩み笑
濱吉:例えば逃げ恥とかさ、鬱陶しいほどはくっついたり離れたりしないじゃん。心やすくみれるじゃん。日本人がもう老人なんだなって。それより先に行ってるイギリスとかアメリカとかも体力がないんだなって。そこで山本さんの作品なんだけど、山本さんの作品って短くもわざと細く長くしているなって思ってて。細く30分みたいな。
近代以降の西洋戯曲って「わかりあえる」かどうかに重きを置いてると思っていて。それを軸に置いた時にわかりあえた、かわかりあえなかったか。例えば人形の家はわかりあえないことについての戯曲だし。でも山本さんの作品ってわかりあえない前提で始まってると思っていて。わかりあえないけど、それを無視して細い関係を続けていく登場人物たちって感じがしていて。そこについては山本さん考えてたりするんですか?
山本:わかりあえないがベースなのは意識してる。平田オリザも言ってるじゃん「わかりあえないとこから」って。でもなんか物語って分解していくと全部ディスコミュニケーションから生まれてるなって思って。
濱吉:でも山本さんの場合は分かり合えないことをあまり苦に思ってない感じ、それがこの時代だなって思う。
山本:あー。
濱吉:「でもそれって前提でしょ?」みたいな。自分達はもうそこの部分が土台としてあって。「わかりあえない?当然でしょ?なにほざいてるの?」みたいな。だからそこに対する努力をする気はない人たち。
林 :そうかも。
山本:わかりあうことを頑張るっていうのは「バター」でやって、やりきって。
濱吉:じゃあ今ネクストステージなんだ。
山本:そうそう。今思うとすごい若い作品だったなって自分でも思う。あの感覚に私はもうついていけない。
濱吉:あれが山本さんの中での東京ラブストーリーだったんだね。
山本:そうそう。東京ラブストーリーって坂本裕二?
濱吉:そう
山本:坂本裕二だってめっちゃ変わってるじゃんね。
濱吉:大豆田とかね
山本:そうそう
濱吉:山本さんの作品の転機は「どこどこのどく」?
山本:「どこどこ」も分かりあいたい話だった。、、、?(林に視線を投げる)
林 :ストーリーが思い出せない!!
濱吉:でもそこのあたりから山本さんの作品、ストーリーにあまり重点がないような気がする。それもわかりあえない前提みたいな。
山本:わかりあいたさみたいなのはあったのかもしれないけど、そこがメインではなかった。わからないまま一緒にいようよみたいなセリフ書いた気がする
林 :言ったいった。わからないよねってわたし言った!
山本:多分最近はわかりたいことの暴力性を考えてるからなのかも
濱吉:なにかきっかけはあったり?
山本:えー。なんだろ
濱吉:いつのまに?
山本:いつのまに
濱吉:今回、うにうまいは山本真生作品の最高傑作だと思ってるの。そこについてはどう思う?
山本:自分で演出しないから劇作フルパワーでできたかも
濱吉:ト書ヒドいよね
山本:笑
濱吉:どうすんのこれみたいな
山本:でも濱吉くんだから大丈夫でしょみたいな
濱吉:今日できてた?
山本:できてたできてた
濱吉:不満は?
山本:ない!
林:ちゃんと海の中入れて嬉しかった笑。これほんとに海入れるのかなって戯曲読んでて思ってたんだよね。おんがくのじかん(会場)も行ったことあるから広さも知ってるからさ。
濱吉:最初はポストモダンっぽい感じで逃げようかなとか思ったりもしてた。でも頑張ろうって思って笑。あと、そのままやっても場所が強いし。
山本:場所が強いからなにやってもいいだろうみたいな
濱吉:そうそう、下見のときにそのテキストをそのままやることに対してダサさはないなと思えて
山本:このあいだ劇的の第一回を見た時に、ここは何をやっても信じられる場所だなって思った
林 :おー
濱吉:言ってるセリフが?
山本:とか状況が。で、多分変であればあるほど信じられる空間。
林 :空間が変だから?
山本:ちょっとジャンプアップした空間じゃんね
濱吉:地下潜るしね
山本:そうそう。だからあそこなら大丈夫かなって思いながら書いてた。
濱吉:場を想定して書いたんだ
山本:想定してた。
濱吉:160cmかける300cmの空間を想定してあれを書いたのか、、、、、、、はみ出てやるぞっていうのは感じた。
林 :濱吉くんが最高傑作だって感じた理由聞きたい
濱吉:今までの作品と比べて今回ロジックとしてちゃんとしてるなって。なんか勉強した?
山本:あのね、心に余裕があった
林 :執筆中狂ってなかった笑
山本:めっちゃ冷静に書いたんだよね。初期衝動をちゃんと形にするまでに時間があった。
濱吉:あー、スタートがはやかったもんね
山本:だし締切あったし
濱吉:急かしてたからね笑
山本:優秀な編集さんがいたので笑
濱吉:今日締切日なんですけどーって
山本:いつも本番に向けてバタバタと書くって感じだったんだけど、今回はゴールが劇作を完成させることだったから。
濱吉:自分は俳優がセリフを頭に入れた状態からじゃないと稽古始められないからね。だからそれで今回はお願いしたんだけど。自分は井上ひさしを待つ栗山民也にはなれない。
山本:いつも稽古はタイムアップがきて、あーって感じなんだけど、今回は書き切るところまでいけたのかなって。
濱吉:心安らかじゃないとやばい作品ができるよね。自分の「劇的なるものをめぐってまごつく二人」もそうだった
山本:安らかじゃない時は安らかじゃない時なりの面白さがあるとは思うけど
濱吉:その時は作品に変な集中力が宿ってるじゃん
山本:宿ってるね
濱吉:怖いよね
山本:これ神がかってるなって瞬間とかね
濱吉:でもそれでやっていくと多分30歳くらいで潰れるなって
山本:しっかり考えて書かないと
濱吉:これ一番聞きたかったんだけど。今回って男性であるケント目線の物語じゃん?初めてじゃないそういう作品?
山本:はじめて
濱吉:最初今回アイデア聞いた時は男性3人の作品にするってきいてたんだけど
山本:なんかちょっとあまりにも自分がいなさすぎて難しかった。
濱吉:想像できないみたいな?
山本:逆に露悪的に書きそうで怖くて
濱吉:今までの山本作品って「私ヤマモトマオから男権社会への復讐」の要素が強いように感じていて。それが必死さとも繋がって素晴らしい作品がたくさんできたと思うんだけど。そこから変わったきっかけは?
山本:復讐というか、今の社会構造によって辛い状況にある女性を書くことは多いと思う。変わったのは11月にやったワークインプログレス(こうさてん)が大きいかもしれない。女性の生きづらさだけを書いていたら先に進めないないのかもって。
濱吉:今回初稿と最終稿があって、初稿の終わりが自分でウニを食べてうまいうまいって言ってて、最終稿がミカがウニを食べさせるけど。男性が男権社会で生きなければいけない社会っていうものが描かれていて、山本さんここまできたか!って思ったの。やっぱ意識はしてた?
山本:してた。それが今回の課題。
濱吉:最終稿で、また過去の山本作品らしさと新しさが両方いい感じに混ざり合ったなって思って。
林:うんうん
濱吉:男性への哀れみだけだったのが、両方の立場のキツさみたいなところを書いていて。
林さんと「あ!いつもの山本作品に寄った!」って言ってたんだよね笑
林:初稿を見た時は山本真生変わりすぎじゃ無い?って思って困惑しちゃって。
濱吉:なんで最終稿ができあがったかっていうと、初稿では最後の場面が薄いなって思ってて。削るか書き足すかして欲しいって要望を出して。そしたら書き直すって来て。やっぱ絶対だったんだねそこは
山本:そうそう
濱吉:最後怖いよね、、、。うにって自分今回は「愛の大きさ」だと解釈してて。愛の大きさって、自分の持っているものも相手のものも、その大きさって意外と気づかないじゃん。愛を持っているんだなっていうのはわかるけど。それを開けてまじまじと見てみた時に小さかったっていう、しかもその味を味合わせるミカの怖さ
林 :後味悪いよね笑 後味の悪さがいつもの山本真生になった笑
濱吉:結局最後は両方の立場を描いていて、「演劇」になったなって思った。
山本:ケントの辛さは描きたかったんだけど、ミカの役をケントを虐げる役割として利用するのが嫌で。一人の人間として二人の人間を描くためにはどうすればいいかってことを悩んだ。タイショウは別だけど
濱吉:今回、タイショウはケントの鏡だと解釈していて。途中の対話も自分vs自分みたいな風に考えている。やっぱタイショウも男性なんだよね?
山本:そうだね
濱吉:タイショウは全然喋らないけど、彼も外に出れば社会の辛さがきちんと降りかかる一人の人間なんだなって思って。
山本:ずっとタイショウに見られているっていうのもでかいかも。
やさしさってどこから出てくるんだろうって考えたときに。人に優しくするって、誰かに見られてるから優しくするとか、逆に誰かに見られてるからこれができないとか。就職しなきゃとか、仕事の成果を出さなきゃとか社会の目だなって思って。タイショウはそういうのを背負ってくれたらいいかなって。
濱吉:日本人の親切って大体それだよね
山本:そういうのに振り回されてるケントって結構かわいそうだなって。泳げないのに、見られてるから泳がなきゃいけないし。
濱吉:見られるから自分が男性だっていうことを自覚しなきゃいけなくなるし、男性=強くあれ、とか助ける存在でなければいけない、とか。それが後半の「がんばれがんばれ」にも繋がってくるよね
山本:あれ鳥肌だよね
濱吉:自分で書いてて思ったんだ笑
山本:吉沢(キルハトッテの劇団員)に聞いたら「がんばれがんばれ」怖すぎだろって笑
濱吉:男性が男権社会で生きていけなきゃいけないことに対してのがんばれがんばれ
山本:しかも言ってる側も悪意がない
濱吉:で、最終的に自分の理想系に順応するっていうね
山本:理想が人を作るからね
濱吉:めっちゃネタバレしてる笑笑
林:観劇終わってから読んでください!!
山本:これからの紙魚は何をするんですか?
濱吉:インタビューだ笑。それはもう前のインタビューで答えたから。そうだ、山本さんのインタビューしてないからさ。今後の予定は??
山本:10月に本公演があります、、、!
濱吉:何か想定はしてるんですか?
山本:2人芝居かな
濱吉:男女?
山本:女性二人。家でやるロードムービー、家から一歩も出ないロードムービーっていうのがやりたくて
林:めっちゃ面白そう
山本:卒業公演です
濱吉:何を研究する目的なの?
山本:俳優が持っている身体をどれだけ歪めずに舞台にあげられるか。
濱吉:おー。
山本:大学では舞台に上がる身体を習うじゃん。ノイズがない身体。でもノイズって誰にとっての?っていうか。その人そのままの身体で、バラバラのまま一緒にいることを考えたいなって。
林:それってさ、平田オリザの「声の小さい人には声の小さい役を」っていうのとは違うの?
山本:ちょっと違うかも。
濱吉:そうなると劇作家の立場ってものも考えなきゃだよね
山本:そう。これって作演出だからこそできることなのかも
濱吉:お楽しみに!
◎作品情報◎
紙魚「うにうまい」
~あらすじ~寿司屋に訪れた2人。ウニを頼むが、一向に出てこない。 大将曰く、この店は全てが「お任せ」らしい。いつのまにか寿司屋は 海へと変わり、2人はウニを探しに深く潜ってゆくことになる。
~演出~
濱吉清太朗(紙魚)
~脚本~
山本真生(にもじ・キルハトッテ)
~出演者~タイショウ…内川天志
ミカ…林美月(にもじ)
ケント…藤原太陽(上智大学演劇研究会)
濱吉清太朗(紙魚)
~脚本~
山本真生(にもじ・キルハトッテ)
ミカ…林美月(にもじ)
ケント…藤原太陽(上智大学演劇研究会)
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