第6回ゲスト:アントーニオ本多さん(素人集団禅♡裸)「創作の根幹にはヴェルナー・ヘルツォーク監督の影響がある」 聞き手:平井寛人・五十部裕明(宇宙論☆講座)

おんがくのじかんで催される、バーでの演劇ショーケース『劇的』

その第一弾の「劇的な昨夜」を、6つの個性豊かな劇団とお届けします☆彡

【公演詳細】
バーでのショーケース公演「劇的」vol.01 『劇的な昨夜』
2022年10月13日(木)ー16日(日)@東京都 三鷹 おんがくのじかん

みなさん、はじめまして。インタビュアーの平井です
当事務局スタッフがイチ押しの、一癖二癖あるような団体さんから、ここでしか聞けないような話を聞きだしてきました!
「劇的な昨夜」参加団体のカタログ、第6回目のゲストは素人集団禅♡裸のアントーニオ本多さんです



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【ゲストプロフィール】

アントーニオ本多
https://twitter.com/romacittaaperta
(
素人集団禅♡裸 https://www.zen-la.com)

1978年生まれ。2005年プロレスラーとしてデビュー、以降人気が減り続けている。


〜おうち時間にオススメの一品〜
・ヴェルナー・ヘルツォーク監督の作品

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運命的な響きをもって、放たれた

本多素人集団禅♡裸は、本当にたまたま出来た団体なんです。

   メンバーの4人中3人がプロレスラーで、元々その3人でよく遊んでいたんですね。

   この3人で集まる時にはいつも、何かテーマが決まっていて、鈴木大拙という仏教学者についての活動を、3人で集まった時に主にやっていました。

   お墓参りとかですね。彼の生まれ故郷の金沢と晩年過ごされた北鎌倉の東慶寺というお寺にあるお骨に会いに、3人で金沢に行ったりしていました。

   結成のきっかけとしてはーー

    二〇年以上も昔、私は学生プロレスをやってたんです。その時の後輩に、バッタリと渋谷駅で再会したんですね。

   それで「何かやりましょう」みたいなことを話したんです。私はその頃にはギター弾き語りを始めていて、そのPVを撮ろうということになりました。

         プッシー佐藤というリングネームの彼はーービューティーペアのジャッキー佐藤さんが元ネタなのですが、

        その彼といつもの3人とで会って、鎌倉に行って、大拙先生のお墓参りの後に海でPVを撮影しました。そこからその4人でよく会うようになったんです。

   シズラー(※後述)で飯を食う会を、昨年末に2回か3回くらいやったり。

   プッシー佐藤は、写真家なんです。

   写真の仕事をしてて、普段は物やモデルさん達などの、結構いい写真を撮るんです。

   仕事じゃない彼の個人的な写真も素敵で、 4人で飯を食っている時、彼に、「展覧会をやったことあるか」と聞いたら「無いです」と。「じゃあ、折角だからやろうか」という話になり、「俺も絵でも描こうかな」と言ってみたら、「自分も、絵を描きます!」と他の2人もやる気がある感じで

        「じゃあ、来年2022年に展覧会をやるか」ということになりました。

   しかし、1週間くらい経った後に、自分のグッズデザインで絵を描いていたんですが、その時に、自分は絵を描くのが好きじゃないなと思ったんです。
   彫刻という話もありましたが、彫刻もやりたくないなと思いました。

   無理してやるのはいかがなもんかなと思って、次にみんなと会った時に「ごめん。やっぱり俺は展覧会とか違うわ」と言いました。みんなは「大丈夫っす」みたいな反応でした。

   それで「他に何かやろう」という話になり、その次に私の口から出たのが「ミュージカル・ロボコップ」という題名だったんです。運命的な響きをもって、放たれたんです笑

   「おー」という反応で、「とりあえず脚本を書いてみるか」という流れになりました。

   私はプロレス以外にデスクワークの仕事をしていまして、仕事中に「仕事をやっているような顔」をして脚本を書き始めたんです。

   私、昔に映画を作ったことがあるんです。それ以来の執筆でした。

   もちろん、舞台作品の脚本を書くのは初めてでした。

   一応、昔に演劇をやってはいたんです。
   学生時代に早稲田大学の劇団に誘われて、5年ぐらいやっていました。
   なので演劇にはわりと慣れ親しんでいる感もありまして、常に人前に出る仕事もしていますし、ミュージカルをやることに関してはそんなに冒険ではない印象でした。

   脚本は、わりとすぐに書きあがりました。
   「ミュージカル・ロボコップ」を観た方は分かると思うのですが、弾き語りの佳納子(佳納子組)さんの弾き語りが挟まるので、内容的にはめっちゃ短いんです。

   脚本にすると実はA4用紙換算で3~4枚ほどしかありませんでした。

   完成した脚本にはすでにキャストに佳納子さんの名前があって、その時には私が一回彼女のライブを観に行ったことがあるだけで、面識もないのに結構重要な登場人物として現れてしまっていたんです。
   脚本が出来上がってから、もう一度佳納子さんのライブを観に行きました。終演後にはコロナ禍の影響で話せないとのことだったので、本番の10分前くらいに「実はミュージカルの脚本を書いたんですけど、その作品に佳納子さんが出ているんです」とお伝えしました。

   結構ビックリされました。でもすごく良い方で、二つ返事みたいな形で「私で良ければ」と言ってくれました。

   4月にロボコップを上演したあと、6月にもロボコップ3という作品を上演しました。
   あれは、アクシデント的に素人集団禅♡裸の作品になったんですね。

   もともと佳納子さんと弾き語りで対バンしたいなと思っていて、たまたま知り合った人に会場を紹介されたんです。

   大山にあるレンタルキッチンなのですが、そこが1時間2,000円とレンタル料金がとても安いんです。
   ただのキッチンなので音響設備もなにも無いのですが、とても良い雰囲気の場所だったので場所を押さえてしまいました。

   私がキャプテン・トゥーシンズという音楽ユニットをやっていて、そのデビューライブにもしようと。そして素人集団禅♡裸のメンバーにも声をかけたら、彼らも空いていると。

   それなら、メンバーのプッシー佐藤とSAGATのために、作曲をしようと思いました。SAGATはとても指パッチンが上手いんです。めちゃくちゃ上手いんで、「口笛と指パッチンとモンチッチのためのソナタ」という曲を作ることに決めました。

   禅♡裸のメンバーが揃ってるので「なにか、お話仕立てもできるな」ということで、そもそもコンサートだった予定を変更してロボコップの続編にしたわけです。

   それが終わってから、特に先も考えずにいました。

   そこでこうして企画の話をいただいたという形です。

   プッシー佐藤くんが年内に東京を去ってしまうという事情もあり、団体として続けられるかもわからない。このお話をいただいて、「じゃあ、もう一回みんなとやれるな」という感じで、嬉しいです。



座頭市とロボコップが出会ったらこうなるだろう

本多:いつも素人集団禅♡裸が集まるシズラーという、食べ放題の洋食屋さんというか、サラダバーが有名な、めちゃくちゃ美味しいお店があるんです。

   そこで「(今回の企画に)オファーをもらったよ。どうしようか」という話をして、「またミュージカルをやるとするなら、なんだろうな」と、最初はETやプレデターなどの映画ものから考えていきました。

   するとプッシー佐藤が「『エイリアンvsプレデター』みたいな対決ものって燃えますよね」ということを言って「なるほど」と。『ロボコップvsプレデター』など案を出していきました。

   プッシー佐藤が岡本喜八監督の「『座頭市と用心棒』とかすごいですよね」と言うのを聞いて「『座頭市vsロボコップ』だ!」「キター!」と。
   タイトルのインパクトも良いですし、こっちはもうロボコップのストックもあるので、これはイケるなということで脚本を書きました。もう、完成しています。

   座頭市も「盲目の剣士」などと、キャラクターがしっかりしているので、一から考えなくて良いというか、「座頭市とロボコップが出会ったらこうなるだろう」という感じで作ってみています。
   でも、結構変な作品にはなると思います。


この世にあるいい音楽を全部聴いてやろう

本多:映画を作っていたことがあって、その時も「ニューヨーク1997」などの既存の映画をベースとした作品を作っていたので、そういう(既存の映画を象った)作り方が多いかなと思います。

   映画を作っていた頃から、作品の内容に音楽が関わることも多かったので、「ミュージカル・ロボコップ」も音楽と映画からの影響が特に通底してあると思います。

   人生で、音楽と映画に費やした時間が一番長い
   中学校の頃にThe Beatlesを聴いて「この世にあるいい音楽を全部聴いてやろう」と思ったんです。映画も「一番好きな映画を探そう」と。

   だから、音楽と映画の研究や購買、平たく言うと費やしたマネーが一番大きい。
   そういうものからのフィードバックがあるんだとは思います。


口から出てみてから「それだー!」みたいなのがきっかけ

本多:今は『座頭市』も『ロボコップ』も知らない人はきっといるので、「意味わかんない」となるかもしれないんですよね。

   私たちは知っているありきで作っちゃうようなところもあるので、実はキャッチーではない。ただ、刺さる人にはいろいろな意味で刺さるんじゃないかと思います。

   格好いい作品には格好いいタイトルが必要なわけで、タイトルの時点で98%くらいは決まっているわけですね。今回も、そういう感じです。

   自分の場合はゼロから作ることが出来ない
   例えば劇作家の方は、あるお話を作っていき「タイトルをどうしよう」と、(仮)のプロジェクト名として進めていって、最終的にタイトルを悩むということもあると思います。
   ただ私はクリエイタータイプではないので、ゼロから作れない。なので、ある種パクっていく

   口から出てみてから「それだー!」みたいなのがきっかけなので、「作品を作ろう」と思ったところでなかなか作れない。自分の中で作りたいものが、もともとあるわけではない。

   だから、例えば『ミュージカル・ロボコップ』の時もタイトルだけ決めて、出演する人たちとして結構すごいと思うパフォーマーを集める。
   そこで「この人たちがどういうことをすれば面白いのだろうか」と進めていく感じなので、作品を作るというよりかは、その人の良いところを考えるという感覚でいます。

   最終的な落としどころはつけますが、作っているときには落としどころが出来てはいない。
   今回は、みんながどういうことが出来るのかわかっているので、少し楽です。


みんな本番力が高い

本多:うちの団員は、ほんとうにすごいんですよ。

   トランザム★ヒロシだけ過去に一回だけ芝居に出たことはあったんですけど、あとはみんな初めてでした。
   SAGATなんてプロレスラーとしては、マスクを被っていて奇声を発するくらいで、あまり喋れないキャラクター。だから『ミュージカル・ロボコップ』を観て、SAGATが初めて喋るのを観たという人が多いくらいでした。

   私たちはプロレスラーとして毎週舞台をやっているようなものなので、人前に出るのは慣れているんですけど、SAGATくんとかは喋ることには相当慣れていなかったと思うし、そういった素人感がやっぱりいいというふうに思っています。

   稽古中に団員が何かをやり始めて、それがめちゃくちゃ面白かったりするので、もう「今が本番であったらいいな」と思ったりするんです。「みんなすごいな」と思う。
   すると、もう稽古をやる気が無くなり、「もう出来るんじゃないか」と思う。

   ただ、次に集まった時には出来なくなっていたりして、「あれは偶然だったのか」とたびたびなります。

   なので、いつもギリギリです。
   セリフ覚えもギリギリで、なるべくセリフを覚えられなくても良いように作りました。

   彼らは面白いぐらい稽古が終わって日常生活が始まると、一切『ロボコップ』のことを忘れて脚本も一切覚えようとしていない。

   家に持って帰ったとしても、進展をしてはいない。
   やる気はあるんですけど、セリフを覚えたりという経験もないし、たぶん時間も無いのだと思う。
   だからなるべくセリフを覚えなくて良いように作って、大事なところはちょっと練習して、というふうに作っています。

   あとはもう、本番力に賭けるということですね。

   自分もセリフを覚えられないから、ギリギリまで覚えていないんですよ。
   正直、稽古と本番、まるで違います

   プッシー佐藤が渋谷に写真のスタジオを持っていて、そこで稽古をしていたんです。
   だから、大きな声を出してはいけないんです。だから、歌も一切練習していなかった
   大きな声を出すと、スタジオの隣の人に怪しまれてしまうので笑

   プッシー佐藤の歌うシーンなんて、ほんとうに一切練習していなかった。
   最初のサンスクリット語で歌を歌うシーンで、あいつだけ初日にも全然覚えていなかった。やっぱり、サンスクリット語を覚えるのは大変なんでしょうね。でも、SAGATはちゃんと覚えてきていた。

   そんなんだから、本番で演技していて、「これ、こんなふうになるんだ」と驚いたりしました。本番でしかしていないことだらけで、結構ビックリしました。
   一方で狙い通りというところもあって、「やっぱりみんな本番力が高いな」と思います。


メロディは自分たちで

本多:旗揚げ公演『ミュージカル・ロボコップ』でも、3公演とも全然変わりましたね。

   最初の回は、「まァ、上手くいった」という感じ。翌日の昼の回では、なんか磁場が荒れていました。なんか変でしたねぇ。3回目の最後で完成したというか、「やっぱり3回ぐらい本番をすると完成するんだな」と思いました。そして「本当に3公演で良かった。4公演やっていたら、みんなもうやる気がなくなっていただろうな」と思います笑

   今回の企画も3公演なので、ちょうどいいです。ただ今回は時間の制限もあって、ダラダラ自由にやれるところがそんなに無いので、3公演ともそんなに変わらないとは思いますね。
   結構演劇っぽくなるというか、セリフをきちんと喋らないといけないのですが、キメキメになってしまったりもするので、ちょっと不安材料でもありますね。

   劇中の歌は個々人に任せることが多いというか、大まかな歌詞は渡しますが、メロディは自分たちで作ります。プッシー佐藤なんか、回ごとに毎度メロディが違っていました。


そもそもいとおしい人たち

本多:全ての人の作品が全て別なわけで当たり前だという話になるかもしれませんが、「良いか悪いかは別として、世間で行われているいかなる出し物とも違う出し物」になると思います。素人集団禅♡裸の団員3人を、見ておいて損は無いと思う。

   作品自体を気に入るかもしれないし、気に入らないかもしれないけれど、私は素人集団禅♡裸の団員3人はすごい人類だと思っています。私は乞食みたいなもんですが笑
   今回は失敗作になる可能性は十分にあると思います。ただ、失敗する彼らを観るのも、本当にいとおしい。
   そもそもいとおしい人たちだから、別に失敗しようとも、いとおしさは変わらない

   僕は彼らともう一度やれて、ほんとうに嬉しいです。

   私が一番素人集団 禅♡裸のファンなんですよ。

   彼らが何かやっているところを見たい。だから、私抜きでも3人で何かやってほしいぐらい。そうしたら見に行くだけでいいから。

   大好きですよ。あの3人は、人生で生きてきた中で本当に愛着を持っている人物たち

(第二回公演『ロボコップ3』劇中より)


『ロボコップ』が楽しすぎて今、仕事に支障をきたしています

本多:団員のプッシー佐藤は昔から変

   団体に禅♡裸(全裸)と付けたのも、プッシー佐藤が学生時代によく全裸になっていたからなんです。

        学生プロレスをやっていた時にも、引退試合で、最後の引退のマイクを捨てる時には全裸になっていました。

   あとはーー美大で、椅子を作る授業があったんです。

         椅子を作ってみんなの前で発表する場で、あいつは椅子を作らず、全体で発表する時に全裸になって人間椅子の形をとった

        そうしたら女の子が絶叫しながら教室から出て行ったらしい。

       それだけじゃない全裸エピソードがもっとたくさんあって、だから「禅♡裸」と付けたんです。

         でも学校を卒業して以来、今は結構まともに生活しているんです。家でもすごい普通なんですって。奥さんも彼を、佐藤健太郎としか知らなくて、私が知っているプッシー佐藤を全く知らない。

         学生プロレスをやっていたプッシー佐藤であるところを一切世間には出していないのに、たまたま今年、それを復活させてしまったがために、『ロボコップ』が楽しすぎて今、仕事に支障をきたしています

        楽しいことしかしたくないという気持ちになっちゃっています。本当にもう、ちょっと困っている。

        それぐらい彼も『ロボコップ』を楽しんでくれていた、それは良かったなと本当に思います

 

おうち時間にオススメの一品

本多: 「素人集団 禅♡裸」の創作の根幹にはヴェルナー・ヘルツォーク監督の影響があるかもしれません。
   ヘルツォーク映画におけるノン・アクター(素人)の活用法にはフィクションとドキュメンタリーのあいだにあるとされがちな壁を消し去るパワーがあります。
   もともとそんな壁などないと語りかけます。劇空間と日常の壁もそうです。



最後の作品になるかもしれない

本多:今回の『座頭市vsロボコップ』は最後の作品になるかもしれない。

   私は引き出しがないから、もうこれで最後にしておいた方がいいのかもしれないです笑

   そもそもクリエーターじゃないですからね。

          今年は不思議なんですよね。人生の中で一番いろいろあったかな。

          本当にいろいろやっています。

          私はむしろライブハウスで弾き語りを、今後コンスタントにやっていけたらなと思っているんです。

         だから今回ライブハウスさんでやるっていうのは、結構楽しみなんです。

   今回の公演で、会場さんともお知り合いになれたらね。でも、我々の作品を観て、もう二度と呼ばないとなるかもしれない笑

        こういった機会をいただいて、ありがとうございます。また近々、実際にお会いしましょう。


◎作品情報◎

素人集団 禅♡裸「座頭市 vs ロボコップ」

~あらすじ~
とある旅籠で按摩として働くことになった座頭市。その最初の客としてやってきたのがロボコップであった!

~出演者~
座頭市:アントーニオ本多
ロボコップ:トランザム★ヒロシ
悪党:プッシー佐藤
女中:SAGAT

~参加チーム・タイムテーブル~
αチーム
2022年10月
 13日(木)19:00
 15日(土)19:00 
 16日(日)15:00※
※終演後にアフタートーク有(約20分予定)

受付・開場は開演の20分前。
上演時間は約90分予定(1団体につき約20分の上演+OP演奏15分)。

明日は関連企画 参加型オンライントークイベント 『異業種間交流会 ~音楽と演劇~』へのご案内です。また次回でお会いしましょう。

 これまでの記事の一覧と、今後(9月30日~)に公開する団体からの自己紹介としての寄稿はコチラよりご高覧いただけますので、今後ともどうぞよしなにお願いいたします。

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